1. 卓球レポート Top
  2. インタビュー
  3. 指導者、他インタビュー
  4. インタビュー ネナード・バック [1] 誰かがこの箱を開けなければならない

インタビュー ネナード・バック [1] 誰かがこの箱を開けなければならない

「パーキンソン病」と「卓球」。この二つを取り巻く動きが起きている。

 パーキンソン病を患いながらも、卓球をすることで回復したミュージシャンのネナード・バック氏が、国際卓球連盟(ITTF)の役員らの前でギターの弾き語りを披露したのは1年前、世界卓球2018ハルムスタッドの期間中のことだ。その後、国際卓球連盟はITTF基金という基金を通じて、ネナード・バック氏が推し進める「ピンポン・パーキンソン」という活動を援助することを検討。第1回パーキンソン世界卓球選手権大会を実施することを決定した。

 第1回パーキンソン世界卓球選手権大会は、今年の10月11~13日にニューヨークで開催される。今年5月末に要項が発表されると、ネナード・バック氏のもとには多くの問い合わせが寄せられたという。

「予想していた以上にすごい反響で、びっくりしています」

 6月14日、取材に応じてくれたネナード・バック氏はこう述べた。

 デンマークからは12名のグループでの参加の打診があり、そのほか、スウェーデン、日本、ブラジル、クロアチア、イギリス、中国などからも問い合わせが寄せられているそうだ。

「申し込み方法はふたつあります。ひとつはITTFを通じて申し込む方法、もうひとつはピンポンパーキンソンに直接申し込む方法です。正確な人数は把握していませんが、参加者数は100名を超えそうです。もし200名ほどになると、会場に収容できませんから、それに備えておかなくてはなりません」

 パーキンソン世界卓球選手権大会は男子シングルス、女子シングルス、男子ダブルス、女子ダブルスが行われ、シングルスは障害の程度によってクラス1、クラス2、クラス3とクラスを分けて競技を行う。
 また、ネナード・バック氏によると、障害の程度によるクラス分けのほかに、競技力によるレベルを分けを行うことも検討しているそうだ。もともと卓球をやっていた人がパーキンソン病を発症した場合と、パーキンソン病になってから卓球を始めた人の場合では、競技レベルの差が大きいという現場での実感から、レベル分けを検討することになったようだ。

 初めてのパーキンソン世界卓球選手権大会。クラス分けも、レベル分けの採否も、何もかもが、初めてのことだ。ネナード・バック氏は、パーキンソン世界卓球選手権大会という、新たな試みへの挑戦について、こう語る。

「パーキンソン病患者は(動きに障害があっても)、パラリンピックには出場できません。つまり、どの大会にも参加できないカテゴリーの人がいるのです。まずはそのことを知ってほしいと思います。
 このパーキンソン世界卓球選手権大会を、将来的にパラリンピックにつなげようと思うことが妥当かどうかは、私にもまだ分かりません。ただ、まずは今回のパーキンソン世界卓球選手権大会を成功させ、評価してもらわなければなりません。誰かがこの"箱"を開けなければならないのです」

 ネナード・バック氏の使った"箱"という表現が、記者にはとても印象に残った。中に何があるのか、何が出てくるのか、出てこないのか、それは開けてみなければ分からない。ネナード・バック氏はパーキンソン世界卓球選手権大会という箱を見つけ、手をかけ、そして今年10月、開けようとしている。<インタビュー第2回に続く

文・写真=川合綾子
取材協力=寺本能理子


【関連記事】
卓球と、パーキンソン病の改善(前編)
卓球と、パーキンソン病の改善(後編)
第1回パーキンソン世界卓球 2019年10月に開催
「ピンポン・パーキンソン」のネナド・バック氏が会見
パーキンソン世界卓球 種目や試合方式が決定

\この記事をシェアする/

Rankingランキング

■インタビューの人気記事

NEW ARTICLE新着記事

■インタビューの新着記事